@article{oai:wako.repo.nii.ac.jp:00004872, author = {宮崎, かすみ}, journal = {表現学部紀要, The bulletin of the Faculty of Representational Studies}, month = {Mar}, note = {application/pdf, 本稿は、井上靖の小説『氷壁』をホモソーシャルの観点から読み解こうという試みである。この作品は、後にナイロンザイル事件として世間をにぎわすことになった、ナイロンザイル切断による山岳遭難事件と、魚津とかおるのモデルとなる槍ヶ岳北鎌尾根での遭難事件の二つの出来事から着想された。それらの経緯をまとめた上で事実関係を整理し、作品の骨格をなすホモソーシャル構造を明らかにする。小坂と魚津という登山仲間が同じ一人の女を愛するようになるという作品の基本構造をホモソーシャルから解釈して、魚津は、小坂の八代美那子に対する恋愛感情を模倣したものと分析した。さらに、小坂が亡くなった後もこのホモソーシャル関係は、小坂の妹かおるを通して継続していた。しかもそれは、かおるを交えた小坂と魚津のホモソーシャルではなく、前述の美那子と小坂と魚津の三角関係において、かおるが小坂の代理として機能している。かおるが、魚津と美那子の恋愛の成就を妨害していたという分析を通して、相思相愛であったにもかかわらず、魚津が美那子を諦めてかおると結婚することを決意したのは、友人である小坂のためであることを導いた。主人公の魚津は、恋愛の成就よりも、ホモソーシャルを尊重したために亡くなったのである。その意味で、この作品は、戦前からの伝統的なホモソーシャル共同体に捧げられた挽歌であるという解釈を提示した。}, pages = {130--117}, title = {遅れてきた戦士たちの挽歌 : 井上靖『氷壁』のホモソーシャル}, volume = {21}, year = {2021} }